〈対話法〉語録(2006.5.3)

従来から、数々のコミュニケーション技法(あるいはルール)が提唱されていますが、いまだに広く定着していません。その一番の理由は、それらの多くが、「コミュニケーションの専門家」のための練習方法を、そのまま一般の人に適用しようとしてきたこと、つまり高度な技法の習得を求めてきたところにあると、浅野は考えています。

一方、〈対話法〉は、だれもが実践できることを目指しているため、従来のコミュニケーション技法から、とくに重要な部分のみを抽出し、それを最優先技法として簡略化しました。つまり、〈対話法〉は、単純さと汎用性に特徴があります。そのため、比較的短時間に習得でき、日常のあらゆる場面(職場、学校、専門機関、サークル活動、家庭など)で活かせるのです。

〈対話法〉を深く理解するために役立つ概念やヒントをここに記します

●人間関係は複雑だからこそ、それに瞬時に対処するためには、最大限シンプルな技法が必要なのである。

●完璧な効果を求めて理論や技法を難しくすると、修得が困難になるため、実践できる人が少なくなってしまう。つまり、「過ぎたるは及ばざるがごとし」。

●〈対話法〉の原則をはじめて読むと、単純なのですぐにできそうであるし、あまりにもあたりまえな方法なので効果がなさそうだ、と思う人が多い。しかし、実際に「確認技法」をやってみると、これがなかなか難しい。いままで、一度も意識してこなかった対応だからである。

つまり、はじめは簡単だと思われていた「確認技法」でさえ難しいのだから、従来から提唱されてきた他の技法はもっと難しいのである。しがたって、他の技法は、なかなか世の中に広がっていかないのである。

●人間関係は複雑であるが、もしかしたら、私たちが考えているほど難しくはないのかも知れない。

複雑さ難しさを混同している人が多い。

●人間関係は難しいから、難しい方法でしか改善できないという思い込みがあるようだ。

●〈対話法〉の普及活動は、「人間関係は難しい」という思い込みへの挑戦かも知れない。

●人間社会は複雑だから〈対話法〉だけで全てを解決できるわけではない。しかし、これが無意識のうちに、だから〈対話法〉は効果がない、にすり替わってしまうことがあるのは残念なことだ。

●〈対話法〉だけで社会における全ての問題が解決するはずはないのだが、〈対話法〉を使わなければ解決しない問題は想像以上に多いだろう。これは、「種を蒔けば必ず芽が出るとは限らない(水分や温度などに適切な条件が必要)が、種を蒔かなければ決して芽は出ない」ということに喩えられるだろう。

●多くの人は十分条件だけに目が向く傾向があるため、必要条件の重要性になかなか気づかない。

●「確認型応答」のような、こんな単純な方法で人間関係が改善してしまったら、これまで持ち続けてきた「人間関係は難しい」という概念が崩れてしまうことを、私たちは無意識のうちに恐れているのかも知れない。

●人間関係は複雑だから、それを改善する特効薬はないと思いながらも、やはり諦めきれないので、つい新しい技法や難しい技法に手を出したくなるのだろう。

(今後、だんだんと増やしていきます)


対話法研究所 浅野良雄

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